デジタル社会と音の集中。ヘッドホンで世界を区切る心理効果と、企業ウェルビーイングへの示唆

医学博士であり、ピアニストの板東浩です。

近年、オフィスやカフェ、移動中など、さまざまな公共空間において、イヤホンやヘッドホンを装着する人の姿が日常的に見られるようになりました。音楽や音声、動画コンテンツを、時間や場所を問わず享受できる時代です。

一方で、この行動は単なる「娯楽」や「習慣」にとどまらず、現代のデジタル社会が生み出す心理的・環境的ストレスへの適応行動として捉えることもできます。
本コラムでは、音楽療法および医学的視点から、ヘッドホン使用の背景にある心理メカニズムを整理し、働く環境や企業のウェルビーイング施策への示唆について考えてみたいと思います。

目次

通勤電車やオフィスで、なぜヘッドホンが手放せないのか

日本社会は、大都市から地方まで多様な環境を内包しています。それに伴い、風景(landscape)だけでなく、音風景(soundscape)も極めて多様です。

現代の生活環境を俯瞰すると、情報過多・刺激過剰という特徴が際立っています。情報通信技術(ICT)の急速な発展により、私たちは常に通知音、会話音、環境音、広告音といった多層的な刺激にさらされています。

都市部のオフィスや公共空間では、騒音そのものだけでなく、人の視線や動きといった非言語的刺激も含め、「過密な刺激環境」が無意識のうちに神経系へ負荷をかけ続けています。

このような状況下において、ヘッドホンは単なる音楽再生機器ではなく、外界の刺激を遮断し、自ら選択した音環境をつくるための調整装置として機能していると考えられます。
言い換えれば、音環境を他者に委ねる受動的な状態から、自ら制御する能動的な状態への転換であり、心理的な主導権を取り戻す行為とも解釈できるでしょう。

「音で境界線を引く」というセルフケア

「音で自分だけの境界線をつくる」という行為は、どのように理解すべきでしょうか。
私が子供の頃に親しんだ漫画には、「バリア」や「結界」といった概念が登場していました。外界から身を守るための象徴的な表現です。

これと同様に、音や音楽は、外界からの過剰な刺激から自分を守るセルフケアの手段として機能します。
好みの音楽や一定のテンポをもつ音は、情緒の安定や集中力の向上を促し、疲労感や不安感を和らげます。特に、刺激に対して過覚醒になりやすい人や、周囲との距離感に敏感な人にとって、音による境界設定は有効な自己調整手段となり得ます。

一方で、注意すべき点も存在します。常時ヘッドホンを装着することで、周囲との自然なコミュニケーションが減少したり、環境への感受性が低下したりする可能性があります。また、長時間・高音量での使用は、聴覚疲労や自律神経機能の乱れを引き起こします。

重要なのは、ヘッドホンを「完全に遮断する壁」としてではなく、必要なときに使い、役割を終えたら外す調整ツールとして位置づけることです。

「音のバリア」がストレスを軽減する医学的メカニズム

心理学および医学の観点から見ると、「音のバリア」がストレスを軽減する仕組みは明確です。

予測不能な騒音や断続的な雑音は、交感神経を過度に刺激し、緊張や警戒反応を高めます。その結果、心身は慢性的な疲弊状態に陥りやすくなります。

一方で、一定の音量や予測可能なリズムをもつ音や音楽は、副交感神経の活動を促進し、安心感や落ち着きをもたらします。
近年では、ノイズキャンセリング技術によって低周波音を効果的に遮断することが可能となり、無意識下でのストレス反応や脳の情報処理負荷が軽減されることも示されています。

このように、音による外界刺激の制御は、心理的回復を促す感覚的休息として機能していると考えられます。
デジタル社会におけるヘッドホンは、孤立や閉鎖の象徴ではなく、過剰な刺激の中で自分を整え、再び社会と向き合うための準備装置と捉えることができるでしょう。

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おわりに

本コラムでは、デジタル社会におけるヘッドホン使用について、その心理的・環境的背景を整理してきました。
音で外界との距離を調整するという行動は、単なる嗜好や習慣ではなく、心理学および音楽療法の見地から見ても、これまでにはあまり見られなかった注目すべき現代的行動と捉えることができます。

過剰な刺激に囲まれた環境下で、音を用いて集中と回復のバランスを取ろうとする試みは、個人のセルフケアにとどまらず、働く環境や社会構造の変化を反映したものとも言えるでしょう。

今後、音は「気分を演出するもの」から、「心身の状態を調整する環境要素」へと、その役割を拡張していく可能性があります。
こうした視点に立ったとき、音の活用は、新時代におけるウェルビーイングや生産性向上を支える重要な手段のひとつとなっていくことでしょう。

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執筆

板東 浩(ばんどう ひろし)のアバター 板東 浩(ばんどう ひろし) 医学博士 日本統合医療学会四国支部長

徳島県糖質制限研究会代表 ​ 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 日本心身医学会 中国四国地方会大会長(2023)。糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2024)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文500以上。「新老人の会」徳島代表。

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