ポイント
職場におけるストレス対策のひとつとして、音楽療法に対する研究による分析が進められています。
医療、教育、飲食業などの現場で取り入れられており、働く人の気分の安定や集中力の向上に役立つとされています。
導入コストが比較的低く、職場の心理的環境改善につながる可能性が指摘されています。費用対効果にも優れていると考えられています。
働く人々の間で高まるストレスへの対策として、音楽療法の可能性に注目が集まっています。
音楽には、心を落ち着かせるだけでなく、気分を整えたり集中力を高めたりする働きがあるとされており、職場における活用可能性が検討されています。
こうしたテーマについて、中国・西安石油大学の研究グループが2022年に発表した論文では、音楽療法の有効性に関する科学的な検討とともに、医療・教育・飲食業などの職種ごとに異なる導入事例が整理されています。
ここでは、その論文をもとに、さまざまな仕事の現場で価値が見いだされつつある音楽療法の意義について見ていきます。
ストレスの多い職場にこそ、音楽の力を

長時間労働や人間関係の悩み、不確実な業務の継続、将来への不安など、現代の職場には多様なストレス要因が存在しています。とくに医療、教育、飲食業などの分野では、業務の性質上、日々の疲労や精神的な緊張が蓄積しやすく、心身の不調につながることも少なくありません。
このような職場環境において、音楽療法が従業員のストレス軽減や仕事への満足度向上に効果をもたらす可能性があると、中国・西安石油大学の研究グループは報告しています。
実際、国際労働機関(ILO)の調査でも、世界各地の企業において、うつ病や不安障害、慢性的な疲労感などを抱える従業員が一定数存在しており、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性が国際的にも広く認識されつつあります。音楽療法は、こうした課題に対する新たなアプローチとして注目されているのです。
今回の論文では、医療・教育・飲食業といった対人業務の多い職場に着目し、職場環境における心理的ストレスの実態と、それに対する音楽療法の効果について多角的に検討しています。
例えば、中国・広東省の教員に対する調査では、94.6%の教員が心理的ストレスを抱えており、そのうち35.6%は「強いストレスを感じている」と回答しています。医療従事者については、「仕事に満足している」と答えたのはわずか10%であり、「不満足」との回答は40%に達しました。さらに、飲食業従事者における仕事満足度が15%と低く、多くの人が業務に対して意欲や充実感を持ちづらい状況が示されています。
一方で、こうしたストレスの高い職場に音楽療法を導入することで、感情の安定や集中力の維持、疲労の軽減、さらにはチーム内の人間関係の改善といった多様な効果が期待できると論文では論じられています。特に、職場環境での穏やかな音楽の使用が、心理的緊張の緩和に役立つ可能性が示されています。
業種ごとに見えてきた効果

音楽療法が働く人々の心理的ストレス軽減に与える影響は、業種ごとに異なる形で現れることが示されています。今回の研究では、医療、教育、飲食業という三つの職種に焦点をあて、それぞれの現場で音楽療法がどのように役立つのかを比較・検討しています。
医療現場では、緊張状態が長時間続く手術室などにおいて、表現力のある音楽(例:静かなピアノ曲など)が使用されることがあります。心拍や呼吸が落ち着き、集中力の回復や感情の安定につながることが期待されています。例えば、音楽の使用により、心理的負担が軽減されることで業務に良い影響を及ぼす可能性があるとの報告もあります。
教育の現場では、授業準備や生徒指導など、日々多くの判断や対人対応が求められます。こうした状況において、職場でリラクゼーション効果のある音楽を活用することで、気持ちの切り替えがしやすくなり、ストレス緩和に寄与する可能性があります。特に教育現場では対象の年齢や役割に応じた音楽選択の工夫が考えられます。
飲食業では、長時間立ち仕事が続くなど、身体的、精神的負荷がともに高い傾向があります。そこで、店内に快い音楽を流すことで、従業員の心理的安定が促される可能性があります。接客にあたる従業員の心理状態が改善する可能性があります。
こうした音楽の効果の背景には、生体リズムとの共鳴というメカニズムが関係していると論文では説明されています。呼吸や心拍といったリズムに音楽が同調することで、自然と身体の緊張がほぐれ、心理的なバランスが整うとされています。実際に、調査では音楽療法を取り入れた従業員のうち、精神労働に従事する人の96%、肉体労働に従事する人の92%が肯定的な評価を示しています。
音楽療法は、職場のストレスに対する癒やしを超えた、実用的な補完療法としての活用が検討されています。感情の安定や集中力の維持に加え、創造性の刺激や意欲の向上に寄与する可能性があるといった多面的な効果が報告されています。
特に、音楽のリズムが呼吸や心拍などの生理的リズムと共鳴することで、自然と気持ちが整い、心理的な安定感をもたらす職場環境の形成に寄与する可能性があります。業種や働き方に応じて音楽の種類によって効果に違いがある可能性が示されています。
今後の研究や導入の検討が進む可能性があります。
参考文献
Mao N. The Role of Music Therapy in the Emotional Regulation and Psychological Stress Relief of Employees in the Workplace. J Healthc Eng. 2022 Jan 29;2022:4260904. doi: 10.1155/2022/4260904. PMID: 35132358.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35132358/
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