音と自律神経。仕事と休息を切り替える交感神経と副交感神経はどのように切り替わるのか

医学博士であり、ピアニストの板東浩です。
私たちは日頃、さまざまな仕事の中で「がんばる」と「休む」を行き来しながら生活しています。仕事の締切に追われるときには心拍が少し速くなり、体は前のめりになります。一方、仕事を終え布団に入った瞬間、ため息とともに体がゆるむ感覚を覚えたことがあるでしょう。このようなオンとオフの切り替えを担っているのが、自律神経です。本コラムでは、音や音楽と自律神経の関係について考えてみます。

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自律神経は「意志」でコントロールできない

自律神経という言葉はよく知られていますが、その働きを日常で意識することは多くありません。私たちが知らない合間にも、心臓は自然に拍動し、肺は呼吸を続けています。心拍や呼吸を常に意識している人はいないでしょう。しかし身体はきちんと対応してくれています。この働きを担っているのが自律神経です。

自律神経には、心拍や呼吸のリズムを速くするアクセル役の交感神経と、リズムを落ち着かせるブレーキ役の副交感神経があります。この二つがセットとなり、身体の状態を調整しています。

ここで大切なポイントがあります。これらは私たちの意志で自由にコントロールできるものではありません。「よし、今から副交感神経を働かせよう」と思って心拍を遅くすることはできません。また「早く寝なければ」と焦るほど、かえって目が冴えてしまうこともあります。

つまり自律神経は、頭で考えて操作する神経ではなく、環境や感覚刺激に反応しながら無意識のうちに身体を調整してくれている大切な神経なのです。

音刺激が自律神経のスイッチになる仕組み

それでは、この無意識のスイッチは何によって切り替わるのでしょうか。ここで注目されるのが音や音楽です。

音は空気の振動として耳に入り、聴覚を通して電気信号となり脳へ届きます。すると脳の奥にある情動や生命維持に関わる領域が反応し、心拍や呼吸、血圧といった自律神経の働きに影響を与えます。

たとえばテンポの速い音楽を聴くと、自然に身体が動き出したり、筋肉が刺激されたりすることがあります。一方、静かな環境に身を置くと呼吸がゆっくり深くなることがあります。このように音は言葉よりも速く、理屈を超えて身体に働きかけます。

音楽療法が長く注目されてきた理由もここにあります。特別な努力をしなくても、音が交感神経優位の状態や副交感神経優位の状態を準備し、身体をそっと導いてくれるからです。

集中が必要な場面では一定のリズムの音が覚醒レベルを保つ助けになり、休息や睡眠の前には音数が少なくゆったりした音環境が身体に「休んでよい」というサインを送ってくれます。

仕事と休息を切り替える音環境(サウンドスケープ)の考え方

ここで大切なのは、音を聴くか聴かないかという単純な問題ではありません。どのような音環境の中で過ごすとよいのかという視点です。

仕事中に無音の方が集中できる人もいれば、環境音や軽い音楽がある方が集中できる人もいます。また休息の時間には、完全な静けさの中で落ち着く人もいれば、波音や雨音のような自然音で副交感神経が高まる人もいます。

このような音環境はサウンドスケープと呼ばれ、空間の質を形づくる要素の一つです。心がオンになるとき、あるいはオフになるときに、自分に合う音環境を知っておくことは大切です。

音や音楽は自律神経を命令で動かす道具ではありません。しかし自律神経が自然に切り替わるための「きっかけ」を与える存在といえるでしょう。忙しい日々の中で、集中したいときの音、休みたいときの音を意識して配置することは、働き方を整える一つの方法になるかもしれません。

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おわりに

心身医学の視点からみると、人間とは「心身一如」であるといわれます。
心と身体は別々に存在するのではなく、互いに影響し合いながら働いています。

音や音楽は、通常の意識だけでなく、深い潜在意識のレベルにも直接的に働きかけます。
そして私たちが気づかないままで、心を癒し、自律神経の働きを整えてくれているのです。

日々の仕事の中でストレスを感じる人も多いことでしょう。
どうか、オンとオフを上手に切り替えてくれる音環境(soundscape)を、日常の中でうまく活用してみてください。

近年は、こうした音環境の考え方を企業のウェルビーイング施策に取り入れる動きも広がりつつあります。


交感神経と副交感神経という言葉の由来
💡
交感神経や副交感神経という医学用語は、少し難しく感じるかもしれません。
そこで、この言葉の由来を少しご紹介してみましょう。
たとえば、知り合いが人間関係や仕事で困難に直面したとき、私たちは相手の立場に立って共感することがあります。英語ではこれを「sympathy」といいます。symは「共に」、pathyは「感情」を意味し、相手と感情を共有するという意味です。
18世紀、オランダの解剖学者Winslowは、怒ると心臓が激しく鼓動し、恐怖を感じると胃が痛くなる現象を観察しました。そして、内臓がお互いに影響し合いながら働く神経があると考え、「交感神経(Sympathetic nerve)」と名付けたのです。
その後、19世紀にイギリスの生理学者Langleyは、交感神経とは反対の働きをする神経系が存在することを発見しました。これは交感神経の「傍ら(para)」にあり、身体を鎮静させ、休息や消化を促す働きを担っています。こうして「副交感神経(Parasympathetic nerve)」という名称が生まれました。
インターネットで自律神経の図を検索すると、交感神経と副交感神経が赤と青で示され、全身に広がっている様子を見ることができます。この二つの神経がペアとなり、私たちの身体のバランスを保っているのです。

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執筆

板東 浩(ばんどう ひろし)のアバター 板東 浩(ばんどう ひろし) 医学博士 日本統合医療学会四国支部長

徳島県糖質制限研究会代表 ​ 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 日本心身医学会 中国四国地方会大会長(2023)。糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2024)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文500以上。「新老人の会」徳島代表。

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